中高年ひきこもり問題は、定年退職のリスクを際立たせている

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中高年ひきこもり問題は、定年退職のリスクを際立たせている

内閣府による初の調査からわかったこと

内閣府による初の調査からわかったこと

内閣府は2019年にはじめて40~64歳のひきこもりに関する推計調査結果を発表(1)しました。発表によれば、40~64歳のひきこもりの総数は、日本全国に613,000人もいるということでした。これは、15〜39歳のひきこもり(541,000人)よりも多いということで、注目を集めています。

ひきこもりのイメージとしては、学校に馴染めなかったり、いじめを受けたり、入社した会社がブラックだったという環境要因から、自己防衛的な意味でひきこもるというものが世間の認識だったと思います。それが、今回の内閣府による推計調査によって、くつがえされたのです。

ひきこもりの高齢化という文脈での報道が多かったのですが、この他にも注目すべきところは、ひきこもりになる理由です。その理由は、多いものから順番に、退職(36.2%)、人間関係(21.3%)、病気(21.3%)、職場になじめなかった(19.1%)というものです。

定年退職の危険性についての再認識が必要

定年退職の危険性についての再認識が必要

ひきこもりになる理由が環境要因であることは、多くの人が認識していたと思います。実体験としても、誰でも一度くらいは「少し長めに休みたい」と感じたことがあるはずです。環境によっては、誰もが、ひきこもりになる可能性があるのです。

ただ、今回の調査では回答時点で60〜64歳でひきこもり状態にある人が初めてその状態になった年代は50歳以上であること、なかでも66.7%が60歳以降であることがわかりました。50代より若い回答者層ではひきこもりになった時期に20代が含まれているのとは対照的です。今回の調査では年代別のひきこもりになった原因への言及はありません。しかし、60歳前後は、早期退職もしくは定年退職といったライフステージの変化が起きる年代であることは間違いありません。

世間一般には、定年退職は、一つの区切りとして、お祝いを持って迎えるものです。しかし現実には、社会的な人間関係を失うことによるアイデンティティーの危機でもあります。少なからぬ人が孤独になり、そこから健康を害し、介護を必要とする状態にまで至りやすいのです。

最もインパクトのある施策とは?

最もインパクトのある施策とは?

ひきこもりになる原因は、退職だけではありません。しかし、ひきこもり状態になった人が挙げたなかで、退職が最も大きな原因になっています。

65歳で定年退職をして「毎日が日曜日」になるのは、相当なリスクだという社会的な理解が必要です。定年退職を完全に無くすということではなくても、いきなり仕事をゼロにしてしまうのは危険です。ボランティアやアルバイトでもよいので、とにかく、社会に居場所がある状態を維持することが重要といえそうです。

平成31年3月発表「生活状況に関する調査 (平成30年度)」

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