#仕事と介護の両立

本人に認知症の自覚がない場合、どうやって病院に連れて行く?〜「認知症予防の最前線と早期発見のポイント」セミナーから(3)〜

#仕事と介護の両立

「家族が認知症のような気がするときに、初動はどうしたらいいだろう」

「認知症なのか加齢による物忘れの範囲なのか」

「一度、病院で検査を受けてもらいたいが、どう切り出したものか」

高齢の親御さんやご親族をもつ方からはこのようなお悩みをよく伺います。 今回、多くの認知症の患者さんやそのご家族とともに歩んでこられた愛知県豊橋市・福祉村病院副院長 伊苅弘之先生ご講演のうち、参加者から寄せられた質問への回答をお話しいただいた部分の抄録をご紹介いたします。


  1. 認知症予防の現状と認知症の主な症状
  2. 早期発見のポイント
  3. 伊苅先生との質疑応答「こんな時はどうする?」←このページのテーマ

質問1:認知症を早期発見することが出来れば、生活するにあたって大きな支障になるような症状が出るのを遅らせることができますか?

認知症対応
ポイント:早期発見でご本人にあわせた対応が可能な介護体制を作る

ここでおっしゃられる「生活するにあたって大きな支障になるような症状」は、社会的な問題になるような行動だったり、大きな失敗だったりするかと思います。物忘れの延長で火事を出してしまうとかですね。社会的なことだと非常に高価なものを買わされたり、物を盗られ妄想から警察に何度も連絡をしてしまったりといったケースも考えられます。これらは、認知症の初期の段階からあります。

将来的には、漫画のドラえもんのように高性能なロボットを1台、ご心配な方のそばに置いておければ、こういう問題はかなり防げるようになると思います。しかし、今はロボットがいないわけですね。となると人間がやったらいいだろうといってもそれができないから皆困っているわけです。

ご夫婦ふたり暮らしの場合や、ご家族数人で支えてあげることができるときでも、大変であれば介護サービスの利用をどんどんすすめる、具体的にはヘルパーさんに入ってもらったり、デイサービスに通ってもらったりということですね。

早く見つけて(症状が)軽い段階から導入すればするほど問題は起こりにくくなります。 それは問題を起こしやすい時間を減らすと同時に、ご本人にも刺激が入って悪化しにくくなるし、周りも助かるからゆとりが生まれる、ゆとりが生まれればご本人に注意を向けられる時間が増える、そういうことを総合的に考えて、ご紹介した早期発見の方法を活用していただきたいと思います。

質問2 認知症ではないかと疑っていても、本人に自覚がない場合、どのように促して病院へ連れていけばよいですか?

医師と患者さんの面談
ポイント:アルツハイマー型の場合には、連れて行く方法を何度も試せる。
     病院・医院の協力も得てひと芝居打つのもあり

私たちは受け手側なので来ていただくのを待っている立場です。ただ、診療は予約制なので、ご家族から「連れて来られないので、どうやって連れて行ったらいいか」というご相談は昔から沢山いただいています。その際にご紹介している方法を一例としてご紹介します。

ご家族がMCI、認知症ではないかとお疑いになった際、認知症には大きく2系統あることをお伝えしました。

アルツハイマーや嗜銀顆粒の方は、基本的に自覚がない方が多いです。体もお元気で、ご家族の方に「おまえの方がみてもらったどうだ」くらいのことを言われかねないケースも往々にしてあります。

こういった方には、病院・医院には相談した上で、ある種のだまし討ちになってしまうのですが、できれば2人以上で、というのも1人だと何か起きたときの連絡などが難しくなってしまいますので、付き添うことにして「前から言っていたとおり、今日は健康診断だ。我々も受ける。歳をとったら全員受けるものだ」くらいのことをお話しして、お連れいただければと思います。そのときに、帰りに美味しいものを食べようとか、何なら最初から美味しいものを食べに行こうと連れ出していただくことでもいいかもしれません。

もちろん、病院に着いてから「聞いてない」「病院に来る日だったか?」とかおっしゃる方もいます。こんなところイヤだとおっしゃる方もいます。そういうときには、仮に言っていなかったとしても、言っておいたじゃないかと、今日は健康診断だからみんなで受けようと、お話しいただければと思います。慣れている病院・医院でしたら、スタッフの皆さんが上手に話を合わせてくれます。当院のスタッフも本当にうまく対応していますよ。

もう一つのケース、レビー小体型認知症の方の場合は、認知症とはおもっておられなくても、自分の状態はちょっと変じゃないかと分かっています。「ほかの病気もあるかもしれないから一度病院で診てもらおう」とお話しいただければ来ていただけます。

ですから、病院に来ていただくのが大変なのは多くがアルツハイマー型の場合なんですね。もちろん、中にはご家族が心配に思う気持ちがご本人の心に伝わることで病院に行ってくださる方もいらっしゃいます。人間関係やご本人の性格・性質次第ということでして、全員がひと芝居して病院に連れて行かなければならないというものではありません。

アルツハイマー型や嗜銀顆粒の方は、ちょっと前のことは忘れてしまいます。とても楽しいか、とてもイヤだったことなど、すごく心に残ったことだと、2、3カ月くらい覚えていることもありますが、基本的には近い出来事についてはお忘れになります。そういう意味では色々試してみることができるので色々やってみてください。

質問3:認知症の本人が医療機関受診やデイサービスや介護スタッフに拒絶反応を起こす場合、どのようにしたらそれらを使用できるでしょうか。

ナースが外で車椅子介助
ポイント:最初は多少無理矢理でも行ってみてもらい、可能なら慣れるまでサポートする

前述の方法でなんとか医療機関は受診できて、ではデイサービスを使おうという話になっても、今度はデイサービスに行ってもらうところでまた大変なわけですね。

実は95%以上の方が、デイサービスに行こうと言っても嫌がります。最初から行こうという人なんてほとんどいないんです。そのうえでどうやって通ってもらうようにできるかということですが、私の患者さんのケースでは9割以上が通うようになっている方法をご紹介します。

基本は慣れてもらうしかないんです。最初は多少無理矢理にでも、行ってみてもらう。ただ、できれば最初はご家族や関係者が付き添う。送迎の車に乗ってもらうのが大変だったら、送ってあげてください。そして、最初の1日目などはデイサービスに一緒にいる、2、3回目になってきたら、半日くらい一緒にデイサービス内にいて近くで待機、3、4回目になったら、一緒にいる時間を減らす。だいたい10回くらいこういうことをしていただければ皆さん慣れてくれます。

物忘れする人が慣れるのかと思われるかもしれません。でも、大変楽しいことや嫌なことは記憶に残りやすいんです。我々もみんなそうですよ。何回か通ううちに、あそこに行くと何かいいことがあったような気がするとか、具体的なことは忘れてしまっても情緒感情面の記憶はとても残りやすいので、そうやって行っていただけるようになります。最初の5回、10回はご苦労されますが、それがうまくいけば皆さんいけるようになりますね。

もちろん個人差はありますが、できれば週1回よりは、2、3回といった具合に感覚を詰めて行かれた方が早く慣れます。これは、ご本人も記憶に残りやすくなるのと同時に、サポートする側も慣れるからですね。

質問4:介護度決定前の暫定ケアプランを地域包括支援センターに依頼しましたが、本人が拒否してしまっていて進みません。家族としてはどのように対応していったらよろしいでしょうか。

患者さんの心をケア
ポイント:ケアマネージャーさんによく相談し、介護サービスが受けられるように進めてもらう

実は私もペーパーケアマネージャーの資格は持っているので、お話しします。確かにケアプランには本人の署名や同意が必要なんですね。一方で、MCIは別ですが、刑法などの他の法律では、認知症の方は意識障害者と同じように扱われているわけなんです。とすると、ケアプランに対してのご本人の同意というのがどのくらい確かなものなのかも考える必要がありますね。

ご家族も、ケアマネージャーさんも、ご本人のためになるようにケアプランを組んで介護体制を作ろうとしているわけですから、ケアマネージャーさんによく相談していただきたいですね。

最初の認定は地域包括支援センターに行かなくてはならないですが、そのプランがご本人やご家族にどうしても合わず、代わりの案もちょっとというなら、地域包括支援センターを変更したり、別なケアマネージャーさんに担当していただくことも可能です。患者さんご家族からご相談があったときにはそういうアドバイスをしています。

我々はあくまでも利用者なんだと思って、困っていることや希望する内容はちゃんとお伝えしてほしいですね。

質問5:できる限り居宅での介護をしたく、そのために家の設備や介護サービスのシステムはどのようにしていったらよろしいでしょうか。

女性介護士 ポートレート
ポイント:試してみないと分からないことも多い。重要なのは最初から他人の力を借りること

本当にいろんな方がおられます。娘さんや息子さんが一緒に住もうと言っても、MCIレベルのご本人が絶対に住まない、1人暮らしをできるだけしたいという方から、一緒に住むことになった結果ご本人もご家族も大変な状態になっていった方、逆に一緒に暮らすことでよい状態になって「よかったねえ」というケースもあります。

ご質問者さんは居宅での介護をご希望されていますが、このように色んなケースがありますので、やってみて初めてうまくいくかどうかが分かるという部分ではあります。

ただ、その場合でも、重要なポイントがありまして、「私ががんばればなんとかなる」とか、「私たちがやれば大丈夫、お父さんやお母さんのお世話はできるから」みたいには思わない方がいいですね。

先ほどマンパワーの活用とお伝えしたとおり、いろいろな人の手を借り、介護サービス利用を進めていくのが良いと思います。ケアマネージャーさんに相談して、どのようなサービスを利用しようか考えていただきたいですし、家についても、ご本人のお体の動きがよい方なのかどうか、階段の上り下りなどの運動の機会は残しておいた方がよいのかどうか、その人に合わせて考える必要がありますね。

「パーソンセンタードケア」と私たちは言いますが、ご本人に合った家の設備の作り方、暮らし方があります。その方の状態に合わせて、工夫しなくてはいけないですね。 なお、介護サービスに関していうと、初期の段階からデイサービスは活用して、ご本人はいい刺激をもらい、ご家族も休める状態を作るのはよいと思います。もちろん、ご本人によってはヘルパーさんに来てもらうほうがよいというケースもあるでしょうが、いずれにしても、初期の段階から、周りの力を借りていただきたいと思います。

(2022年5月26日「認知症予防の最前線と早期発見のポイント」セミナーより)


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※AIRS®はがんであるか否かおよび認知機能が低下しているか否かの判断、並びに上記疾病の生涯に渡る発症リスクを予測するものではありません。

※AIRS®は診断・治療・予防に直接寄与するものではありません。

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